西洋古典学会一日目&第十回洛北史学会

午前10時過ぎ、同志社に駆け込む。本日から開催の第59回西洋古典学会、本年の会場は、ここ同志社の、烏丸通りの西側にある寒梅館。会場は、地下にあるホールで、レンガ積みの壁面が、しっとりした味わいを醸し出している。
ラヴェンナサン・ヴィターレ聖堂を思い出すなあ」
何となくそんなことを思いながら、午前中の報告を聴き、午前の部終了と同時にそこを抜けて京都府立大学へ。本日は洛北史学会の大会なのだ・・・が。
さて。
西洋史系の学会では、スーツでの出席が原則である。従って私も、当然ながらスーツ。しかし、この格好で大学に顔を出したことは殆ど無いし、ましてや洛北史学会ではスーツ着用者の方が稀だ。ついでに言うなら、私が普段愛用している丸ツバの帽子は、スーツに似合わないこと夥しい。しかし、私の目は陽光を直に浴びるのを嫌う。そこで妥協案として、スーツ着用時にはサングラスが手放せないのだが、そのままで府大に駆け込むと、
「堅気には見えませんね」
とのコメント大多数。

本日の洛北史学会大会は第十回、私は日本にいなかった一度を除いて全て出席しているのだが、会場が昨年大会と同じ場所ということで、マイクが全て落ちた昨年の悪夢が私の脳裏を占め続けていたおかげで腰が全く落ち着かなかったのだが、幸いにして音声を初めとするPA関係は、いっさい問題なし。終了の瞬間には思わず大きく嘆息した。
さて、本日のテーマは

水がつなぐ人と自然
−共生の〈環境史〉にむけて−

ということで、どうやら最近また流行になりつつある、環境史をテーマにしている。個人的には、環境史という分野は、西洋の歴史学がリードしてきたようなイメージがあるのだが、西洋史の報告が無かったのは些か残念であった。
そんな個人的感慨はさておき、報告者のトップバッターが府大、というより史学ゼミの大先輩である山崎氏だったため、共通の知人である旧ご主人様友・F女史を呼び出し、参加してもらう。文学系の彼女には些か酷だったかな・・・まあ私も日本史の報告の時には軽く船を漕いでいたが。しかしながら、トップの報告は中国・杭州という、私には昔馴染みのところだったから、
「嗚呼、懐かしい」
と、思わず叫びそうになった。一番勉強になったのは、江戸時代以来の琵琶湖周辺の環境の復元作業にあたっている三番目の報告で、地味ながらもきわめて骨太な報告で、
『入会地の話とか、西洋中世と似ていやしないか』
と思う。近年の環境史の傾向、江戸時代を理想化する傾向にも警鐘を鳴らすアンチ・テーゼとして、きわめて意義深い報告だった。琵琶湖の港湾施設について、内湖を利用する話などは、個人的にはプトレマイオス朝アレクサンドリアをすぐに連想してしまったのだが、・・・西洋史イスラーム史との比較の話が出ていればなあ、と残念無念でならない。
懇親会で、報告者のお一人に言われた言葉。
「え、君、西洋史なの?とても見えへんなぁ。中東史やろ」
・・・当人を含め、周囲の誰も否定できず。否定する気もなく。