第29回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会参加記

3月30日更新

旅から帰ってすぐ、今度は金沢です。もともと今回のヨーロッパへの春旅の日程は、このヘレニズム~イスラーム考古学研究会の日程が明らかになってから決めたのですが、報告者の名前が一向に増えないので、

「12月に行った報告と同内容であれば、できます」

と申し出たところ、帰国直後の報告が決まりました。

さて、帰国したのは3月8日、一度帰宅した後、その日のうちに金沢に向かいました。青春18切符でいったのですが、なかなか金沢が遠かった。乗り継ぎが上手くいかず、近江塩津で30分近く列車待ちをしたのが・・・他の駅ならいざ知らず、近江塩津は何もないのです。金沢に着いたのは十時近くでした。

開けて3月9日、今回の会場である、石川県文教会館に向かいます。帰国して驚いたのは、フランスやスコットランドより日本の方が寒かったことです。とくに金沢は、到着と同時に雪が降りだし、この日は溶けかけた雪の上を歩いていくことになりました。会場に着くと、世話人の金沢大学・足立先生以外に、準備に携わる人員がいないという、何とも寂しい状況でした。慌てて準備をお手伝いしていたら、なんと本日の研究会で使用するPCとして私のPCを提供することに。時期が悪かったのかなぁ。

さて、本日の報告題目と報告者は、以下の通り↓

  • 柴田広志 「秘境」サウジのナバテア岩窟墓群~マダーイン・サーリフおよびサウジアラビアの最新情報~」Nabataeans' stone-carved tombs in Saudi Arabia and the latest information for Saudi Visitors
  • 田辺勝美 「カニシュカ1世銅貨の弥勒仏坐像考:ガンダーラ弥勒菩薩像は存在したか?」Maitreya Buddha on Kanishka I’s bronze coins revisited—Did the Image of Bodhisattva Maitreya exist in Gandhāra?—
  • 田辺美江「胴部に仏像がついた青銅の壺」A Bronze Vessel with Buddha images on the body
  • 井上 豪「キジル第38窟『バルコニーの奏楽天人』の図像について」About the iconography of Qizyl Cave 38 “the Muses on the Balcony”    
  • 丸小野壮太・佐藤育子「パブリックヒストリーから考える開かれた古代地中海世界史研究:市民協働型の歴史実践」“Open Studies on the Ancient Mediterranean World History” from public history: a citizen-collaborative historical practice
  • 佐藤育子・丸小野壮太「アッシリア史とフェニキアカルタゴ史から考える開かれた古代地中海世界史研究」Open studies on the Ancient Mediterranean World History in the view point of Assyrian History and Phoenician-Punic History
  • 榮谷温子「現在の高校の社会科でイスラームはどのように教えられているか」(仮題)How is Islam currently taught in high school social studies?

なんと私が先頭打者です(苦笑)。報告前日に道中つらつら考えてふと気がついたのは

「マダーイン・サリーフは、西洋古代史・古典学の人にとっては『秘境』だが、考古学の人にとっては秘境ではない」

ということでした。サウジが行きにくいのは、私のような個人旅行者にとっての話です。現地で発掘調査に参加している日本人考古学研究者は、必ずしも珍しくはないのです。聴衆の少なさ(参加者は報告者+主催者くらいでした)も手伝ってか、12月の古代史研究会の時に比べると落ち着いた雰囲気の中での報告でした。そのぶん私も、報告をしながら聴衆に向かって質問を投げかけるなど、肩肘の力を抜いて話すことができたと思います。まぁ、私と続くお三方の発表時間が押してしまって、最後の3本は端折りながらの報告となってしまって、大変に申し訳なかったと反省しております。

研究会の後は、懇親会でした。この「当たり前の構成」が、なんと嬉しいことか。特に最終報告者のはるこ先生とお会いするのは2019年以来、ましてや懇親会の場で盃を酌み交わすのが初めてでもあり、大変に楽しいひとときでした。