生涯初、村祭りの中止

「この雨じゃあ、お祭りは出来せんなあ」
「だでよお、体育の日は10月10日にしとかないかんのだって」


コテコテの名古屋弁丸出しの冒頭の会話が示すとおり、体育の日、私は例年のごとく、地元の神社・神明社で、秋の祭礼当日の、お囃子の朝稽古をしていた。もっとも、私の役目は、主要メンバーである小学生が遊んだりしないように目を光らせるというのが主であったりする。
だが、今日に限っては、集中力が欠けている子を叱る気にはならなかった(叱っていたけど)。何より、私自身が天候を気にするあまりに気もそぞろなのだ。秋のお祭りは、私が祭り囃子をやるようになってから毎年晴れで、「雨天中止」となっているものの、中止という事態は一度も経験した事がなかった。私が経験した事がないのだから、私が太鼓を叩きはじめた頃(すいませんがもう二十年前です)には生まれていないチビっ子たちも、当然経験していない。子供会の役員さんたちも、ましてや地元の長老たちも、どうしたものかと朝から梟首協議していた。
その結果、午後から予定されていた祭りの行列は中止、神楽だけは町の神社である八所神社で奉納する事になった。
何だか気が抜けてしまったが、皮肉だったのは、祭りの中止が決まった後に雨が上がった事。
『まあ、こんな年もあるか』
苦笑いしながら、毎年恒例の神社での仕切り役にきりきり舞いするのだけは、今年も変わらなかった。やっぱり、夏に一回くらいは練習に来ないといけないなあ。後輩の命令とかに唯々諾々と従う自分の惰弱ぶりに、また苦笑せざるを得なかった。それにしても、来年は来ない可能性が高いのだよなあ・・・