紹介『アテネ 最期の輝き』

アテネ 最期の輝き

アテネ 最期の輝き

諸般の事情から、詳細に感想を書いている余裕はないので、内容紹介とその感想を手短に。
従来支配的だった、ペロポンネソス戦争をギリシア古典期終焉の晩鐘とする見方への批判的傾向については、私も承知しているところである。この立場から書かれた、橋場弦先生の『丘のうえの民主政』は極めて説得的であり、私も夢中になって読んだものである。ただ、橋場氏の本にあっても、カイロネイアの会戦を古典期終焉への分水嶺と見なす視点は不変であった。その意味で、カイロネイア戦後にまで分析を加えている本書は、巷間において支配的な見解への見直しを迫る一冊である。
実のところ、アレクサンドロス大王に関する著作ですら少ないのに、その時代のギリシアの政治状況を分析した日本語の著作が出るなど、一昔前であれば、まず望めないことであった。本書はその状況を大幅に改善する一冊と申し上げて良いであろう。なにより、本書に込めた著者の熱い思いは、我々を大きく魅了するものである。