「ペルガモンとシルクロード展」見学記in岡山

岡山市立オリエント美術館で行われている「ペルガモンとシルクロード展」の見学に行ってきた。この美術館に足を運ぶのは、これが最初の機会になる。存在そのものはよく知っていたのだが、何しろ遠いもので、これまで見学は見送ってきたのだ。今回はひょんなことから招待券を入手できたのと、特別講演をされる方のラインナップ、そしてなによりテーマに惹かれて見学を決意した。何しろ、ペルガモンである。専門である私が、ヘレニズム時代に栄えたこの王国のことを知っているのは当たり前の話だが(現地も訪問しているし)、この王国にスポットを当てた特別展が開催されるとは、知識を持っていればいるほど信じ難い思いが高まろうというものである。
「ペルガモンをテーマにした特別展が行われるなんて、私の学生のころには思いもよりませんでした」
という、今日の講演をされた千葉大学・田村孝先生のコメントは、嘘偽りのない本音であろう。なお、講演をされる方は9月20日が前田耕作先生(和光大学名誉教授)、27日が芳賀京子氏(東北大学)、そして今日が田村孝先生というラインナップで、本音を言えば全部聞きたかったのだが、先週末にどうしても外せない試験を受験したために、今日の報告しか聞けなかったのである。まあ、金銭的問題もあったが。


さて、前日に岡山に乗り付けて一泊して、今日は真っ先に美術館へ。宿からは歩いて15分ほど、他の観光名所には目もくれず、9時半過ぎには美術館到着。近くには岡山城もあるが、13年前に見たことでもあるし、今回はスルーすることに。それにしても、9時に開く美術館というのは珍しい。
館は小振りで、じっくり見て回っても、1時間強もあれば全て回れるくらいの大きさ。小さいせいか、職員さんはこちらが頼まなくても展示物の解説をしてくれるなど、もてなし心に溢れている。今回の展示は発掘品の質もさることながら、発掘関係者のスケッチや図版、関連出版物などが豊富に展示されているのが驚き。11時から1時間は学芸員さんによるギャラリートークがあって、おかげでより深く理解することが出来た。
『準備、大変だっただろうなぁ』
というのは、昔の自分の経験にかこつけての想像である。
そして1時から、千葉大学・田村孝先生による講演、「ローマの東方進出とペルガモン王国」。聴講者はお年寄りが多くて、数も多い。田村先生は今年から学部長になられたそうで、お忙しいであろうに報告を引き受けられたのは、やはりテーマに惹かれてのことだろうか、と思う。ペルガモンは私も今後、視野に入れなければならないテーマになりそうなので、聞いてみようと思ったわけである。ペルガモンの歴史についての概説を1時間半強、休憩を挟んでスライド上映・質疑応答が1時間ほどという、たっぷり3時間の構成。質疑もかなり面白いものが多くて、
「調査はどの国が主に行っているのか」
などといった、「おおっ」と唸る質問が多い。この質問は、国際情勢とダイレクトに関係してくるから、興味本位の質問では、全くないのだ。講演終了後には、先生に作ったばかりの名刺をお渡しする。名前を覚えていただいていて、恐縮至極である。慌ただしい中だったので、流石に長話をする余裕はなかったのが残念である。

講演後、路面電車に乗って岡山駅に行き、姫路経由で大阪に出る。何故に岡山〜姫時間は各停しかないのかとか、そもそも岡山駅に着いたのが4時15分くらいで姫路行きがでるまで30分も待たなければならなかったのかとか、いろいろぶつぶつ言いながら到着した大阪で、友人F女史と会い、食事をしながら雑談。近々スピーチをする機会があるとかで、
ゴーストライターになって」
そりゃ無茶だ。粗筋は考えてあげたから、後は自分でブラッシュアップしなさい。