旅記事を逆撫でに読む&属州研究会特別企画

まんたんウェブ」を見るつもりで毎日新聞のサイトを開いたら、こんな記事が出ていたので紹介。

海外旅行:就職売り手市場で格安パックツアーが人気


 旅行会社各社が卒業を控えた大学生向けの海外旅行販売に力を入れている。「超売り手市場」で就職活動から早々と解放された大学生の間で、格安パックツアーの人気が年々上昇。業界最大手のJTBは、08年1〜3月分の取り扱いが昨年12月時点で前年同期比45%増の約2万人に急増。他社も1万円台の格安商品を投入し、しのぎを削っている。
(中略)
 学生の海外旅行熱が高まる時期は、景気拡大期と重なる。昨年10月時点の大学生の就職内定率は、就職氷河期といわれた02年10月より5.1ポイント高い69.2%。国際観光振興機構によると、07年1〜3月に海外旅行をした20〜24歳の人は約47万3000人で、02年の同時期より2万6000人多かった。

 学生気質の変化もある。かつては個人で長期間旅行する学生が多かったが「最近は就職が内定して時間に余裕のある学生が、何度もツアーに行く」(HIS)ため、格安海外旅行の需要が増えているという。


毎日新聞 2008年1月26日

何故か軽く顔をしかめてしまった。
「ツアーには絶対に逝きたくない」
と誰憚ることなく公言し、
「君のような客が来たら絶対嫌だ」
と添乗員に言われれば周囲が即座に首肯するような私であるが、ツアーの利点について認めるところがないわけではない。個人では行き難いようなところ、時間がないので焦点を絞っていく必要がある時、などには有効であるのは確かなのだ。
ただ、いつも思う。あれは、若者向けではないのだ。だって異文化との接触が殆ど無いんだもの。
「異文化を一番感じさせる要素といったら何か」
と問われれば、飯と移動と宿泊と排便施設使用の時だと思う(食事中の方、すいません)。そして旅の醍醐味は、これら日常の営みに加えて、寄り道と沈没であろう。
要するに旅のおもしろみは、「無駄」の積み重ねにある。そう思う。
それが一切無い、システマティックなツアーを、私は以前、サファリパーク観光に例えた事がある。無菌室の中に封じられた、まさしく「パック」の揺りかごに安置された状態での移動。そこには、かつて本欄でも触れた(→こちら)、
「海外旅行という『遊興』の極地」
という図式の額縁に飾られた見本がある。ポジティヴな筆致で書かれているが、私は逆に暗澹とした気分になってきた。海外旅行の氷河期に海外旅行を積み重ねた人間だもんね。


午後、同志社大学寒梅館の大会議室で行われたマーガレット・ミラー教授の講演会、
Orientalism and Ornamentalism: Athenian Reactions to Achaemenid Persia
を聞いてきた。事前配布されたレジュメに一切目を通さないという、阿呆なミスをやらかしたが、今日の講演会では節ごとにホストの同志社・中井先生が日本語で解説を挟まれたので、何とか私でも理解出来た。話が古代と近代を行ったり来たりするので、ついて行くのがかなり大変だったが。六階にある会議室から京都の夜景が見えて、非常によい光景だった。

Athens and Persia in 5C BC: A Study in Cultural Receptivity

Athens and Persia in 5C BC: A Study in Cultural Receptivity

この本、買わないといけないのかな・・・面白そうだけど。