イランの人質事件解決〜新旧・旅の猛者の対話?

イラン邦人誘拐:中村聡志さん、8カ月ぶり解放 犯人逮捕

テヘラン春日孝之】在イラン日本大使館は14日、イラン南東部で昨年10月、武装麻薬密輸団に誘拐された横浜国立大生、中村聡志さん(23)が解放されたと明らかにした。国営イラン通信もモホセニエジェイ情報相の話として、中村さんが解放され、犯人が逮捕されたと報じた。(毎日新聞

私が現在、五大紙でもっとも信を置く海外特派員・春日孝之氏のもとから朗報が届いた。昨年、イランで日本人が誘拐された事件が、遂に解決した。一応、
「被害者は無事に帰ってくるだろう」
との予測は、発生一ヶ月後にT海大学のH田先生とお話しする機会に申し上げていたのだが、その見通しが間違っていなかったこと、何より被害者が無事に帰ってきたことを心の底から祝いたい。・・・ただ、予測では、もっと早い時期に解放されると思っていたのだが。
さて、この事件解決から一夜明けた今日、非常勤の小谷先生の授業は、私ひとりしか出席していない状態で、だんだんと先生との雑談のようになってしまう。その際、ふと思い出して、この事件の話を持ち出すと、
「あのルートは、それは危ないですよ」
と先生が仰る。先生は40年ほど昔、アフガニスタンやイランやパキスタンで調査をされていて、イランやアフガン国内をジープで走破されたこともある猛者だから、その発言には千鈞の重みがある。ではあるが、私もこの件については、自分の経験上、一家言ある。そこで、
「仰る通りたしかに危険な地域ですが、彼と全く同じルートを歩いて無事何事もなく通り抜けた人間としては、反論せざるを得ません」
と申し上げてあれこれと話をしていたら、新旧二人の旅人―勿論、先生は調査行、私は殆ど物見遊山の道楽旅という違いはあるが―の、旅の昔話の思い出話披露会、旅行情報交換会になってしまう。凄い授業だな。遅れてきた後輩は目を丸くしていた。

大月氏(だいげっし)―中央アジアに謎の民族を尋ねて (東方選書)

大月氏(だいげっし)―中央アジアに謎の民族を尋ねて (東方選書)

先生のご著書はこちら。版元切れだそうだから、関心のある方は本屋へダッシュすべし。


※補記:
今のところ、誘拐された邦人への心ないバッシングは思いの外少なく、無事の帰国を歓迎する論調が多数を占めているように思われる。ただ、これは誘拐されてからの時間が長く、その間に無事を願う論調が大勢を占めるように変化していったからだろう。誘拐直後は、事件を奉じるマスコミの口調はかなり手厳しかった。その時点で批判を散々したので、今はその点には触れないが、今の常識や雰囲気から、過去もまたそのようであったと想定してしまうことの危険さ、あるいは難しさを、あらためて思う。・・・と、これは杉山先生の本のフレーズのパクリなのだが・・・