2024年春旅の記録③~南仏3都市巡り

3月25日更新

今回の春旅では、当初はロンドンからバスでベルギーに抜けるという(残念ながら流れてしまった)2020年の計画を踏襲するつもりでした。それを練り直したのは、ガイドブックを見ている間に

「南仏のローマ遺跡を回りたい!」

と思い始めたためです。そうなると、フランス再入国前に英国から直接飛んだ方が良いだろう、と判断しました。それに合致する便が、ロンドン8:40発、ただしガトウィック発のEasyjetでした。ガトウィックですから、ロンドン市内からだと2時間近くの所要時間を見ておく必要があります。そうすると、一番都合が良いのはヴィクトリアを3時半に出るバスでした。これに間に合わせようと思えば、必然的に睡眠時間を削るしかなくなるわけです。結局、ロンドンの宿では2時間ほど眠っただけでした。

Easyjetに乗る際には(LCCでは)初めて機内預けを利用したのですが、なんとこれが、自分でやる方式です。つまり、自動端末があり、そこにバーコードを読み込ませて、出てきたタグを自分で付ける・・・という方式です。普段、目の前でみているはずの手続きも、いざ自分でやるとなると途端に手順があやふやになってしまいます、面食らうやら戸惑うやら、という一幕がありました。

マルセイユ空港から市内にはバスで駅まで出て、宿に荷を預けてから市内観光に。流石港町だけあって、サン・シャルル駅から海岸まで、それほど離れていません。お目当てのヨーロッパ地中海文明博物館は結局見学できず、代わりに博物館複合体となっている旧慈善院を見学しました。ここに入っている地中海考古学博物館は、エジプトおよびローマ関連の収蔵品と展示が大変に充実しています。また、同じ敷地内のアフリカ・オセアニアアメリカ先住民美術館は、民具の展示が圧巻です。

ヴィエイユ・シャリテ(旧慈善院)と地中海考古学博物館の展示

大都市だけあって、教会も巨大なモノがあります。行ったのは二箇所、港に面して建つサント・マリー・マジョール大聖堂と、旧港を見下ろす丘の上のノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バシリカ聖堂です。前者は外も内も新しい教会でした。後者に行くには、旧港に沿って走るバスに乗って丘を上っていくので、港町の風情を感じることができます。内装も綺麗ですが、なんといっても外の眺望が素晴らしい聖堂でした。

マルセイユ旧港とノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バシリカ聖堂

次の日には、早くもマルセイユを発ってアヴィニョンへ。宿はTGVの駅の近くだったので、市街地からやや離れたところにあります。アヴィニョンは14世紀にローマ教皇が居を構えたところで、その時代の教皇宮殿があります。「ローマ教皇のバビロン捕囚」などとも呼ばれ、フランス王の強権とローマ教皇の権威失墜の象徴などと世界史では習ったモノですが、その時代のフランス王はイングランドとの百年戦争の真っ最中で、強権発動などの時期ではなかったはず。実際、宮殿内の展示を見ると、教皇が両国の調停を図ったとする説明もあります。なにより、教皇庁が堅牢な城塞の体を為していて、ヴァティカンと比べると自衛に力を注いだ作りになっています。「教皇アヴィニョン捕囚」の実態は、始まりはいざ知らず、教皇庁がローマから避難したというのが実態のようです。現在は、その方向で研究が進んでいるようです。

アヴィニョン教皇庁(左2枚)、旧市街、サン・ベネゼ橋

アヴィニョンを起点として、近くのオランジュを訪れました。この2都市、距離は近いのですが、鉄道では接続が非常に悪い。1時間半から2時間に1本しか便がないのです。いったん乗ってしまえば所要時間は15分なのですが、とても不便です。一方、中央駅の脇にあるバスセンターからオランジュにはバスが30分に一本出ています。ただしこれが、オランジュの中心部までは行きません。また、停車場所が非常に多いため、1時間以上かかってしまいます。そんなわけで、行きは中央駅から列車(€7.60)、戻りはバス(€2.10)を利用しました。

そのオランジュは、ローマ時代の円形劇場跡が綺麗に保存されているところです。舞台の後ろにそびえる壁が、実に綺麗に残っています。また、ここは現役の劇場でもあるために照明道具が舞台上にも客席にも設置されています。劇場から少し離れたところには、凱旋門があります。風化は否めないものの、表面の浮き彫りもかなり残っています。交通量の少ない通りのロータリーに、存在感を発揮していました。

オランジュの円形劇場と凱旋門

アヴィニョンからは、夜にバスで発ちました。といっても、バスの発着所は郊外にあり、待合所もありません。近くのトルコ人経営の料理屋でコーヒーをすすりながら時間を潰していると、店の親爺さんがフライドポテトをオマケしてくれた上に、支払いは要らないというのです。

「旅人は助けるというのが、俺たちの流儀だからさ」

思わずホロホロとなりながら、定時の22時半から15分ほど遅れて到着したバスに乗り込みました。