書評:森谷公俊『新訳 アレクサンドロス大王伝』 、『アレクサンドロス大王東征路の謎を解く』

6月16日更新

私の書評が掲載された『洛北史学』21号を受領に行きました。

 まず申し上げたいのは、この本の著者たる森谷先生への感謝です。とても勉強になる、しかもとんでもなく面白い本を書いてくださったこと、伏して御礼申し上げます。

 この2冊、特に『東征路の謎を解く』の方は、森谷先生からいただいた時のことが忘れられません。唖然としながら貪り読み、「あー面白かった」と感嘆しながら本棚に大切に仕舞いこんでおりました。その段階では、書評を書くなど、到底思いもよらず。後で、研究者としては先輩にあたる方が

「え、柴田君、森谷先生の本の書評、書かないの?」

と私のいないところで呟いておられたという話を聞いて、思わず苦笑したものです。

 書評を書く気にならなかったのではなく、とても書けないと思ったのです。つまらないから、では全くありません。とんでもなく面白いのです。ただ、その面白さの背景にあるのが、圧倒的な現地踏査の蓄積です。読みながら地図帳と『旅行人ノート』アジア横断編、Googleマップ、果ては自分がイランを旅行中に書いた日記と撮りためた写真を見比べる作業を必死で繰り返すという、普段とは全く違う手間をかけて、何とか読了しました。その感想は、

「とても批判など不可能」

というものでした。以前にも書いたことですが、この本の批判が可能な方は、東海大学の春田晴郎先生を措いて他にはいない、というのが本音です。しかし引き受けた以上は、精一杯やるしかない、と無知も的外れも百も承知で、恥も顧みずに書評を書いた次第です。しかしながら、書評の作業はとても面白いものでした。その理由はやはり、今回担当した両書ともに、とても面白い本だったから、という点に尽きるでしょう。冷や汗を滝のようにかきながら、しかし楽しい仕事ではありました。

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